公開: 2024年4月21日
更新: 2024年4月21日
1938年、ドイツの物理学者、オットー・ハーンが、ウランに中性子を当てると、バリウムと中性子が作られることを発見しました。リーゼ・マイトナーは、そのとき、核分裂が起こっており、それによって、ウランからバリウムが生成されていることを解明しました。さらに、1939年、フランスの科学者たちが、核分裂によって作り出される中性子の数が、2子から3個であることを発見しました。このことは、ウランの核分裂で発生した中性子2個を、次のウラン原子に当てれば、さらに2つのバリウムと4この中性子を生み出すことを意味します。この核分裂の連鎖をつぎつぎと起こすことができれば、爆発的なエネルギーを得られることになります。
ところで、この核分裂を起こすウランは、ウラン235で、天然のウラン鉱石には、たった0.3パーセントぐらいしか含まれていません。天然のウラン鉱石には、99,7パーセントのウラン238が含まれています。ウラン238は、安定していて、核分裂は起こりません。天然のウラン鉱石を使った場合、核分裂を起こすウラン235が少ないので、中性子を当てても、核分裂はゆっくりとしか起こりません。つまり、爆弾のように瞬時に、核分裂を起こすことはできないのです。ただ、ゆっくりとした核分裂の連鎖でも、水を沸騰させることはできるので、発電には利用できます。初期の原子力工学では、この点に注目して、核分裂を発電に利用する方法が研究されていました。
ウラン238が多い天然ウランを利用した核分裂を発電に利用すると、その結果、ウランからブルトニウムが生成されます。このプルトニウムも、核分裂を起こす物質なので、原子爆弾を作る材料になります。この発電に利用した後に残ったプルトニウムを利用して、爆弾を開発したのが、米国で行われたマンハッタン計画です。天然のウラン鉱石から、ウラン235を集めて、原子爆弾を作ろうとすれば、膨大な量のウラン鉱石が必要になります。これに対して、発電の結果残ったプルトニウムを集めて、爆弾を作ることができれば、数多くの爆弾を比較的少量のウラン鉱石から作り出すことができます。